『ドラゴンクエスト1(HD-2D版)』を遊んだ話
はじめに
継がれゆく、ロトの意志。(Steamの説明文より)
ゲームタイトルの正式名称は『ドラゴンクエストI & II』。
オリジナル版はFC(ファミコン)版にて発売された『ドラゴンクエスト』(ドラクエ1)と『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』(ドラクエ2)の2タイトルとなっており、本作品はこの2タイトルのリメイク作品をセットにした作品となっている。以降の文章では、オリジナル版との区別のため今回プレイするリメイク版ドラゴンクエストを『HD-2D版ドラクエ』として記載する。
今回はこのHD-2D版ドラクエ1&2から『ドラゴンクエスト1』のみをプレイした感想となります。遊んだバージョンは現時点の最新版となるVer.1.0.2.0。
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私はFCでリリースされたオリジナル版とSFC(スーパーファミコン)でリリースされたリメイク版にてプレイ済で、それ以降にリリースされたスマホアプリ版などは未プレイです。FC版での話の流れは大体覚えているけれど、SFC版での変更点とかその辺りの記憶は曖昧なので間違いなどあるかもしれませんがご容赦ください。
感想
ストーリー
ドラクエ2、3との繋がり描写が追加
ドラクエ1のストーリーは「ロトの勇者の末裔が囚われたローラ姫を助けて竜王を倒す」というシンプルな内容となっている。SFC版のリメイク作品でもこのストーリーはほとんど同じで、基本的には画面の高精細化やゲームバランスの再調整などが主な変更点であったと記憶している。
今回のHD-2D版リメイク作品では、SFC版やスマホ版などのように軽微な修正だけでは味気ないと感じたのかどうかは分からないが、システムのみではなくストーリー面に於いてもかなり追加・変更が行われている。
具体的には「ロト三部作」と呼ばれるドラクエ1からドラクエ3までの三作品で一貫した物語を描くことを意識していると思われ、今回プレイしたドラクエ1から100年後の物語となるドラクエ2、ドラクエ1の主人公の先祖となる勇者ロト誕生の物語となるドラクエ3との繋がりを示唆する描写が多く追加されている。
- 本作ドラクエ1と、その前日譚となるドラクエ3の繋がり
- 勇者ロトの装備に関するエピソードが追加
- ドラクエ3に登場した一部人物がそのまま本作にも出演(妖精族の数名やドワーフ族、カンダタ一族など)
- 本作のラスボスとなる竜王の出自に関する描写が追加
- ドラクエ3勇者のエンディング後のエピソードが追加
本作の前日譚となるドラクエ3では主人公の勇者(=勇者ロト)が本作の舞台となるアレフガルドへたどり着いて大魔王ゾーマを撃破する過程で手に入れた装備や出会った人物がそのまま引き続き登場する。特に勇者ロトが装備していた『オルテガの兜→ひかりの兜』に関するエピソードを元に、ドラクエ3勇者がゾーマ撃破後に家族がいる元の世界へ帰れなかったというオリジナル版ではさらっと描かれていた悲惨な話をもう少し掘り下げる形でエピソードが追加されている。
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| 名前と覆面パンツが襲名制になったカンダタ |
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| ドラクエ3でも出演していたこだまの妖精(名前は本作が初出) |
- 本作ドラクエ1と、その100年後の後日譚となるドラクエ2の繋がり
- キーアイテムとなる五つの紋章が出来た経緯を本作シナリオに追加
- ドラクエ2のボスとなる大神官ハーゴンに関する描写が追加
HD-2D版ドラクエ2は未プレイであるがオリジナル版をプレイしていれば分かる範囲で書くと、ドラクエ2のキーアイテムとなる五つの紋章(太陽、月、星、水、命)がドラクエ1勇者と妖精族によって作られたものと描かれており、ゲーム進行の過程で素材を集めて各紋章を作成するシナリオが追加されている。
また、ドラクエ3で登場した竜の女王の子どもがドラクエ1のボスである竜王、そしてそれを手引きしたのがドラクエ2のボスである大神官ハーゴンであると描かれている。竜の女王との関係性はこれまでのゲーム内では描かれていなかったが、今回のHD-2D版リメイクにて明確に血縁関係であると描写され、さらに大神官ハーゴンも竜の女王に仕えていた神官長であったと(これはHD-2D版ドラクエ3のエンディングにて)描かれるようになった。
シリーズの主人公であるロトの一族と対比するようにドラクエ1、2のボスがドラクエ3に登場した竜の女王に関係するキャラクターとして登場することで、「ロト三部作」と呼ばれる三作品のそれぞれの繋がりを強調する、今回のHD-2D版リメイクにおける一番のキーとなる追加要素(演出)であると言えるだろう。
キーアイテム追加に伴う「おつかい」増加
本作HD-2D版ドラクエ1では、ドラクエ2に登場した『五つの紋章』の他にもドラクエ3に登場した『三つの鍵』も登場するようになっている。
元々のオリジナル版ドラクエ1で登場する『鍵』は『かぎ』の一種類で店売りの商品となっており、一度使用すると壊れるアイテムとなっていた。それがHD-2D版ドラクエ1では『とうぞくのかぎ』『まほうのかぎ』『さいごのかぎ』の三種類が登場するように変更となった。この変更に伴って、オリジナル版であれば『かぎ』一種で色々なエリアへ行くことができたのが、鍵が手に入るごとに行けるエリアが少しずつ増えていく形になっている。自由に進むことができた(悪く言えば投げっぱなし)シナリオが鍵種の追加によって導線が出来た(言い換えると一本道になった)わけである。
ちなみに『まほうのかぎ』はリムルダールにいる鍵の魔法使いから手に入れることになるが、『まほうのかぎ』入手後に鍵の魔法使いは「一度使ったら壊れるまほうのかぎ」を売り出して金儲けをしている旨の後日談が聞ける。つまり、HD-2D版勇者が『まほうのかぎ』を作った後に、オリジナル版勇者が「一度使ったら壊れるまほうのかぎ」を買わされているというわけである。パラレルワールドか?
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オリジナル版ではラストダンジョンとなる竜王の城へ行くためには『虹のしずく』というアイテムを手に入れる必要があり、その『虹のしずく』を手に入れるためには『たいようの石』と『あまぐもの杖』が必要となる。
HD-2D版ではそれに加えて『五つの紋章』と『三つの鍵』も手に入れる必要が増えており、これらのキーアイテムを手に入れるためにクリアする条件が発生する。この条件のほとんどが「キーアイテムの前提となるアイテムを探して手に入れる」と言ったものとなっており、オリジナル版以上に色んな街やダンジョンを行ったり来たりすることになる。端的に言ってしまえば、おつかいイベントがかなり追加されているわけである。
ロト三部作のストーリーをより深く描くためにイベントが増えたのか、イベントを増やすためにドラクエ2やドラクエ3で登場したアイテムを追加したのか。プレイヤー視点からは「鶏が先か卵が先か」問題みたいなものでいくら考えても正解が分かることはないのでこの経緯を推察することはしないが、結果的にプレイヤーのゲーム体験として追加されたのが「おつかいイベント」ばかりというのは面白みに欠けるという感想になるのは否めないところである。
連鎖して煩雑になる目的
ドラクエ1勇者の最終目標である「竜王を倒す」ために集めないといけないアイテムが増えたわけだが、本作ではこれらのキーアイテム入手の前提条件が別のキーアイテム入手となっていることが大半となっている。
ざっとまとめると以下のような関係になっている。
- 目的:竜王の城へ行く→条件:『虹のしずく』を手に入れる
- 目的:『虹のしずく』を手に入れる→条件:『聖なるまもり』と『たいようの石』と『あまぐもの杖』を手に入れる
- 目的:『ロトのしるし』を手に入れる→条件:中ボス・エクソダスを倒す
- 目的:『たいようの石』を手に入れる→条件:『まほうのかぎ』を手に入れて、太陽の賢者に会う
- 目的:『あまぐもの杖』を手に入れる→条件:精霊ルビスを召喚する(※)
- 目的:精霊ルビスを召喚する→条件:『ようせいのふえ』と『ぎんのたてごと』と『五つの紋章』を手に入れる
- 目的:『ようせいのふえ』を手に入れる→条件:マイラの街へ行く
- 目的:『あまぐものつえ』を手に入れる→条件:『さいごのかぎ』を手に入れて、ガライの墓へ行く
- 目的:『いのちの紋章』を手に入れる→条件:『ひかるタネ』を手に入れる
- 目的:『みずの紋章』を手に入れる→条件:『湧き水の結晶』を手に入れる
- 目的:『たいようの紋章』を手に入れる→条件:『不滅の炎』を手に入れる
- 目的:『つきの紋章』を手に入れる→条件:『月光のしずく』を手に入れる
- 目的:『ほしの紋章』を手に入れる→条件:『星くずの砂』を手に入れる
※オリジナル版では『あまぐもの杖』を手に入れるためには雨の賢者に『ぎんのたてごと』を渡せばよかったのが、HD-2D版では「精霊ルビスを召喚する」に変更となっている。
これに加えて『三つの鍵』も集める必要があり、当然『とうぞくのかぎ』→『まほうのかぎ』→『さいごのかぎ』の順番で手に入れていくことになるが、こちらは物語を進めていく過程で手に入っていくのであまりおつかい感はない。それなら『五つの紋章』を入手する下りももうちょっとうまいことならんかったものか。
太陽の賢者は会えば『太陽の石』を渡してくれるし、虹の賢者でも『ロトの印』である『せいなるまもり』を持っていれば『虹のしずく』を作ってくれる。ここはほぼ変わっていないのに(三賢者の中で一番最初に会う)雨の賢者だけ精霊ルビスの召喚と条件が厳しくなって、それに必要な前提条件がやたらと多くなっている。
この変更はまあ許容したとしても、ゲーム上表示できる「旅の目的」は直近の目的しか表示されないので「あまぐもの杖を手に入れるために精霊ルビスを召喚する」という目的はゲーム中すぐに確認できなくなり、しかも途中で「竜王に対抗するために精霊ルビスを召喚する」と目的が(一時的に)すり替わる。このせいでゲーム中の目標が余計に分かりにくくなってしまい、淡々と言われるがままにキーアイテムを探すという「おつかい」感が強くなってしまったように思われる。
また、五つの紋章を作るためには錬金の妖精に紋章の素材となるアイテムを渡す必要があるのだが、どんな素材アイテムが必要なのかはノーヒントとなっている。手に入れたら名前からなんとなく察することはできるものの、錬金素材自体が何処にあるかは前情報なしとなっており、行く先々でダンジョン内にある宝物をすべて回収することがほぼ必須となる。ダンジョン内をくまなく回るのが面倒に感じるタイプの人にはつらい仕様である。(私は逆にすべて回りたくなるタイプなので勝手に集まった)
ザライの旅と勇者ロトのゾーマ撃破後の話
本作ではドラクエ3に登場した吟遊詩人のガライの子孫であるザライというキャラクターが登場する。ザライもガライと同様に吟遊詩人をしているが、初登場時はスランプに陥っており、そのスランプを打開するきっかけを求めて先祖ガライや勇者ロトと所縁のある土地をめぐっている。そして、勇者に対しても勇者ロトと関わりのある場所を知ったら教えてほしいと依頼してくるという話である。
ザライが登場するたびにイベントマークは表示されるものの、メインストーリーとは直接関係がなくゲーム内で確認できる「旅の目的」にも一切表示されることはない。言わばサブストーリー的な立ち位置としてHD-2D版に追加されたイベントとなっている。
イベントの詳細は省略するがこのイベントを進めていくと最終的にドラクエ3勇者がアレフガルドにたどり着いた最初の地点である「ラダトーム西の島」へ行くことが出来るようになり、ドラクエ3で登場した『オルテガのかぶと』改め『ひかりのかぶと』、本作で言うところの『ロトのかぶと』が手に入るという流れになっている。『ロトの兜』はオリジナル版には登場しない装備だったので、入手方法から全て本作から新規に追加された要素というわけである。
ただ、このイベントは『ロトのかぶと』を手に入れるためだけのイベントではなく、ドラクエ3勇者が勇者ロトと呼ばれるようになった後の話、つまりドラクエ3のエンディング後のエピソードを知るストーリー上重要な話となっている。
ドラクエ3にて大魔王ゾーマを撃破すると、アレフガルドと上の世界を繋ぐギアガの大穴が塞がってしまい勇者(とそのパーティー)は故郷へ帰ることが出来なくなる。しかし、世界は平和になったのでヨシ!と言わんばかりにそのままハッピーエンドっぽく終了する。「いや、大魔王を倒した代償として故郷へ帰る術を失うのは主人公的にはバッドエンドでは?」と当時の私は思ったし、私以外にもそう思った人もきっといることだろう。「実はエンディングの後帰れたのでは?」みたいな考察も見たことがある。
この追加イベントでは、ドラクエ3勇者がエンディング後に故郷がある上の世界へ帰ることが叶わなかったということがHD-2D版ドラクエ3から登場している妖精のセリフを通じて告げられ正式に勇者ロトのバッドエンドが確定する。
このエピソードはドラクエ3とドラクエ1を繋ぐ「ロト三部作」の物語を描く上では重要な話である。ゲーム上でも一枚絵を用意して語られる程度には丁寧に語られている。そして、HD-2D版ドラクエ2にてこの話が伏線になっているというネタバレを既に本作発売当時に見てしまったので私は知っている。
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| 故郷へ帰れなかった勇者ロト(=ドラクエ3勇者) |
ただ、この話はあくまでサブストーリー的なイベントであり、ゲーム自体は見なくてもクリア可能となっている。
ザライのイベント自体が各地を転々とするザライを追わないと進まないので前半はゲームの進行と合わせて遭遇するが、後半は過去訪れた場所を意図的に再訪問しないと進まないようになっている。実際、私もロトのかぶとを手に入れるところまでは進めることができたとは言え、ザライのイベント自体が完了したのはクリア後(攻略情報を確認した後)である。
『ロトのかぶと』以外のロト装備自体がストーリーとは関係なく脇道へ反れないと手に入らないようになっているので、それを踏襲したと言えばそれまでではあるが、色々と「ロト三部作」の繋がりのためにメインストーリーの目的を煩雑にしてまで色々と組み込んだのに勇者本人のエピソードだけ見逃す可能性がある脇道に置いたのはちょっと腑に落ちない印象を受けた。
ローラ姫同行前提のようなストーリー
ドラクエ1勇者の旅の目的は「竜王を倒す」以外にもあり、それは「ローラ姫を助ける」というものである。オリジナル版のドラクエ1ではローラ姫を助けなくても一応クリア可能にはなっていたが、今作HD-2D版ではローラ姫を救出しないと迷いの森の霧を晴らすことができないため、ゲーム進行上必ず助けないといけなくなった。
ローラ姫の救出後、ラダトームの城へ連れて帰ると『王女のくびかざり』(※オリジナル版では『おうじょのあい』)が手に入るがこちらも必須ではなく、ラダトームの城にさえ立ち寄らなければローラ姫を連れたまま竜王を倒すことも出来る。これはオリジナル版でもそうだったし、本作HD-2D版でも可能となっている。なので私はあまり深く考えずにローラ姫を連れたまま攻略するプレイをしていた。そして感じたのは、本作がローラ姫を連れたまま攻略することを前提にしたかのようなつくりになっているということだった。
ドラクエシリーズ恒例の喋らない主人公の代わりにイベントが発生するたびにローラ姫が喋るようになっている。しかも音声ありで。専用のセリフがあまりに多く用意されており、ローラ姫を連れて竜王撃破を報告する専用エンディングまで用意されている。さらに終盤になると戦闘中に回復や守備力追加などの補助も行ってくれるようになる。おそらくローラ姫を連れて進める方がストーリー的にもゲーム攻略的にもメリットが大きいように感じられた。
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| ローラ姫は道中ずっと惚気ているが、アレフガルドの住人達は基本無視する |
ただ、ストーリー進行上は「ローラ姫をラダトーム城へ連れて帰る」も旅の目的として表示されるので、普通に考えればローラ姫をすぐに連れて帰る方が自然である。連れて帰ると「旅に同行したい」旨の発言はするものの選択肢などはないので、ローラ姫を連れて攻略するのはやっぱり「分かった上で」選ぶルートだとは思われる。その割にはすごく手の込んだ演出になっているなあという印象であった。
◇
ちなみにモンスターとの戦闘中もローラ姫は頻繁に「勇者様、さすがです!」とか音声で色々喋る。敵を倒すたびにヨイショしてくれるので「これは接待プレイか?」と思うほどで、私は音声オフするモードがないかつい調べてしまったほどである。
姫を連れた状態で宿屋に泊まると宿屋の主人が「ゆうべはおたのしみでしたね」と言ってくるというこれまた有名なセリフは本作でも用意されている。本当に何故子供向けのゲームのガワをまとっているつもりなのか分からない。メルキドの神父がやられた直後でもマイラがモンスターに襲われた直後でも宿屋に泊まればかならず「おたのしみ」しているようで、戦闘中の煩さも含めてローラ姫空気読まないんだろうなぁと思うなどした。
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| たぶん宿屋側の嫌味なんだと思われる |
各地で襲われるアレフガルドの住人たち
ドラクエ1の舞台となるアレフガルドの地は常にモンスターの脅威に晒されており、その一端を表現するものとしてドムドーラの街がある。HD-2D版ではドラクエ3が先に発売されているので廃墟になる前のドムドーラの街を見ているプレイヤーも多く、その対比から「モンスターに破壊された街」という印象をより強く受けることだろう。
オリジナル版であれば廃墟はドムドーラだけであるが、HD-2D版ではドムドーラ以外にも「忘れられた廃墟」や「名もなき廃墟」とモンスターに破壊された集落の名残りが追加されている。この廃墟には他の住人が全滅して自暴自棄になる老婆がいたり、集落を破壊されたことをきっかけに冒険することになった新米冒険家たちが登場したりする。
そして廃墟を追加するだけではなく、HD-2D版ではまだ健在である街もモンスターに襲撃される。ガライやマイラなどは勇者やアレフガルドの住人達の力によって被害は最小限に抑えることができるものの、妖精の隠れ里では妖精たちの半数がモンスターにやられてしまい、メルキドの街では都市こそ襲撃されなかったものの住人に慕われていた司祭もやられてしまう。モンスターに司祭がやられる→モンスターに妖精がやられる→住人たちがモンスターを撃退する、という流れは「戦っているのは勇者一人だけではない」という演出だと思うが、それにしてもなかなかに凄惨な状況である。
HD-2D版のロト三部作がリリースされるあたりで「ドラクエ12はダークなドラクエになる」みたいな話が出ていた(そしてのちに撤回?された)が、そもそもドラゴンクエストシリーズ自体が鳥山明氏のポップなイラストで中和されているだけでシナリオ自体は常にダークでは?と改めて感じさせる追加要素であった。
追加ストーリーの印象(まとめ)
HD-2D版ドラクエ3の感想でも書いた通り、ドラクエ3ではメインストーリーにはあまり手を加えられていなかった印象だったが、本作HD-2D版ドラクエ1ではかなりメインストーリーにも手を入れてきたなと感じた。
またドラクエ3の方では勇者視点の物語に都度オルテガ視点の物語が差し込まれるようになったことに、主人公への感情移入が阻害されるようなチグハグさを感じさせられたが、今作ドラクエ1では王様や妖精など勇者と出会った人からの伝聞として追加エピソードが描かれるようになっており、主人公である勇者視点の物語として一貫性が保たれる形になった。喋らない主人公の代わりにローラ姫がずっと喋っていたが、まあこれはローラ姫同行プレイが(たぶん)メインルートではないはずなのでご愛敬ということで良い気がする。
リメイク作品が出るたびにオリジナル版には無かったエピソードや追加されることを「補足」と見るか「蛇足」と見るかという議論はよく起こる。今回のドラクエ1の追加は、「ロト三部作」の中の一つとして見たら良い「補足」だったと感じられた。HD-2D版ドラクエ3をプレイした人には分かる演出が増えているし、おそらくドラクエ2へ繋がるであろう演出も数多く見られる。きちんと三部作の第二話になっていると感じた。
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| 竜王撃破後に出現するガライ(ドラクエ3に登場)の幽霊 |
ただ、良いのはあくまで三部作の第二話として見た場合であって、「ドラゴンクエスト1」単体として見た場合はやや冗長な部分が目立っているとも思われた。
伏線のために繰り返される「おつかい」イベントや、モンスターの凄惨さを描くために繰り返される「襲撃」イベントなど似たようなイベントが繰り返される。特に今回追加された「五つの紋章」錬成イベントは次作ドラクエ2への繋ぎとして追加されている印象が色濃く、ゲーム単体として見ると精霊ルビスを召喚するなら『ぎんのたてごと』と『ようせいのふえ』2つだけで進めた方が目的がブレなくて良かったのではないかと思われた。
ロト三部作の第二話として見ると良いのだが、言い換えるとドラゴンクエスト1が「ロト三部作を描くためのドラゴンクエスト1」になり過ぎているとも言える。「三部作を通して遊んでほしい」というのはあくまで製作者側の意向であって、中には「ドラゴンクエスト1だけを遊びたい」という人もいるかもしれない。「遊ぶのは1&2だけでいいや」という人もいるだろう。そういった人にも受け入れられるリメイク作品になっているかと問われれば個人的には疑問符が付くだろう。
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| FC版ドラクエ3を知らないと分からないネタ |
そもそもナンバリングタイトルを「3→1→2」の発売順で遊んでほしいと言うのは「知っている人」や「HD-2D版の発売をリアルタイムで追っている人」向けに過ぎなくて、例えば10年後に本作を遊んでみようと思った人がいたとしたらやっぱり「1→2→3」と数字順に遊んでしまうんじゃないかなぁと思うし、今回のHD-2D版リメイクは数字順に遊ぶ人に向けては作られていないように感じられるのがちょっと問題かなとも思わないでもない。
ゲームシステム
HD-2D版DQ3からの改善点①:フィールド上のアイテム
HD-2D版ドラクエ3で気になった点のいくつかが改善されていたのでそれから書くことにする。
まず1つ目は3D構築されたフィールドの視認性の悪さやアイテム配置の問題について。
HD-2D版ドラクエ3では3Dの物陰に宝箱などのオブジェクトが配置されていたり、街やダンジョン内などでは目印が何もないただの地面にアイテムが頻繁に落ちていたりと、アイテムが見つけやすい配置になっているとはお世辞にも言い難い状態となっていた。アイテムを探す楽しさがあるとは言えず、「とうぞくのはな」や「レミラーマ」などアイテムを探す特技や呪文を用いて虱潰しに探していく作業感が強いものであった。
今作ではこの問題はある程度改善されており、『ちいさなメダル』のような収集アイテムは宝箱やツボなどのオブジェクト内に配置されるようになっており、探索は比較的容易になっていた。一部のアイテムは以前のように何もないフィールドに配置されていることはあったがドラクエ3に比べるとだいぶ少なくなったと言えるだろう。
また、マップ上に点在する「ひみつの場所」と呼ばれるアイテム回収ポイントのような場所自体がそもそも分かりにくかったのだが、私は結局利用しなかったがオプションで目印を表示できるようになったのも改善ポイントであろう。
HD-2D版DQ3からの改善点②:戦闘中の弱点、バフ・デバフ効果の表示
2つ目はモンスターの耐性・弱点が確認できず、またモンスターに付与されたバフ・デバフの効果が分かりにくいといった戦闘時のUIの不十分さの問題についてとなる。
この点についても今作では改善されていた。まずモンスターの弱点については呪文や特技選択時に表示されるようになった。但し耐性は分からないし、さくせんコマンドから確認できる討伐済みモンスターリストからは弱点・耐性は確認できない。また、初見のモンスターであっても弱点が表示されるので「弱点表示されたやつだけ選んでおけばいいや」みたいな感じになってしまうので、弱点を突いた後とか2回目以降の戦闘からとかでも良かったんじゃないかという気もしないでもないが、まあそこまで細かく実装するのが面倒だったのであろう。
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| 画像ではわかりにくいが、呪文のリスト上でも弱点が目立つようにハイライトされている |
モンスターに付与された状態異常やバフ・デバフ効果についても、コマンド選択時に「相手のようす」を表示する機能が追加された。これによってモンスターの状況が把握しやすくなった。表示するためにボタン押下とワンクッションあるものの、ほぼ情報がなかったドラクエ3に比べれば大きな改善と言えるだろう。
とは言えドラクエ1ではパーティメンバーが勇者一人だけということもあり、モンスターに対して複数バフ・デバフを付与する機会はほとんどなかったのでこの機能の恩恵はあまり得られなかった。この機能に感じては4人パーティーであるドラクエ2にて恩恵を感じられるのかもしれない。
戦闘面の難易度は高め
続いて今作単体の感想となる。まず戦闘面の難易度はドラクエ3に比べてもかなり高めであると感じた。
元々のオリジナル版ではモンスターが一体しか出現しなかったのに、今作では他作品のように複数出現するようになった時点である程度予想がつくかもしれない。ムチやブーメランなど複数の敵に対して攻撃可能な武器は追加されているものの、一撃で敵を一掃できるほどの火力が備わっている武器や呪文はほとんど存在しない。最終盤に覚える『ギガデイン』ぐらいなものである。
HD-2D版ドラクエ3でも感じたように敵の攻撃自体がそこそこ火力高めなこともあり、複数モンスターに遭遇した場合に勿論攻撃は勇者一人に集中することもあって1ターンでHPの大半を持っていかれることも少なくない。回復道具や呪文を用いた所で1ターンで受けたダメージを補う程度であり、回復した時はこちらが攻撃もできないので結局ジリ貧になって死亡してしまうなんてこともよくあることであった。
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| 思っている以上に簡単に死ぬ勇者 |
そのため戦闘開始時の1ターン目に何を行動するのかが重要であり、「一発で倒せるモンスターを選んで撃破する」「状態異常を付与して被弾を減らす」など必要な対策手順を取らないとならない。とは言え、初遭遇したモンスターなどは一撃で撃破できるかどうかもどんな状態異常が効くかどうかも分からないので、何度かはやられながら確認していくしかない。まるで「死にゲー」のようなゲームバランスである。
ただボス戦含め一対一の戦闘であれば初見であってもそれなりに対策できることが多かったので、複数モンスターが出現した時の戦闘バランスがやや厳しめになっているといった印象だった。
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| ローラ姫を連れているとローラ姫も死ぬ(全滅表記に変わるので) |
ガライの街だったか序盤に「敵の数に応じて武器を変えろ」というアドバイスを受けるのだが、私の印象としては敵に合わせて変えるのは武器よりも防具の方が重要で、炎を吐くなら火に強い装備を選ぶなどモンスターからの被ダメを如何に減らすかが大切であると感じた。
さらに弱点実装で物理でゴリ押しが難しくなっている関係上、MP管理も重要になってくる。HPに余裕があるうちは「ふしぎなぼうし」や「ふしぎなボレロ」などのMP消費を減少させる装備にして高火力の呪文や特技でダメージを与えて、その後は防御力の高い装備に変えて被ダメを減らしつつ物理でとどめを刺す…みたいな戦法を取ってMP消費を減らすようにしていた。戦闘中にロトの装備を脱いで着替えるロトの勇者など見とうなかった。
モンスターに合わせて武器や防具を切り替えながら戦っていかなくてはならないというのは、得てして単調になりがちな戦闘へ戦略性をもたらすものであって面白いと感じた。ただ、この戦略性がドラゴンクエストに求められているゲーム性であるかというと難しいところではあるが。
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本作では勇者がレベルアップに応じて覚える呪文や特技以外にも、巻物を読むことで覚えることができる呪文や特技もある。巻物で覚えるのはドラクエ3でいうところの勇者以外の職業が覚えるものになっている。
また覚える呪文や特技以外にも武器や防具を使用することでのみ使えるものもあり、「スカラ」相当の守備力を上げる効果のある「ようせいの剣」や「フバーハ」相当のブレスダメージを軽減する「えいゆうの杖」などは被ダメを減らす目的でよく利用した。
さらに「いのちの紋章」入手後に使えるようになるHP半分以下など特定条件下で使用可能な超絶技というのもあったが、私はあまり利用しなかった。HP半減時など死のリスクが高い状況で使えるかどうかを探さないとならず試行錯誤する余裕がないというのと、MP消費も高めなものが多くリソース管理する上でも使用タイミングが難しいという理由による。ボタン長押ししてコマンド選択しないと使えるかどうか分からないので忘れてたというのもある。
まとめ
前回のドラクエ3の感想記事でつらつらと不満を列挙していたが、その不満箇所が程度の差はあれど改良されていたことには「みんな同じ感想だったんだな…」と年単位遅れて共感を覚えた。そして、作り手側もきちんと改善しようとしている意識が感じられたのも好感が持てた。まあドラクエ3の時点でもうちょっとなんとかなっただろうとも思わなくもないが。
また、ドラクエ3の時のような「オリジナル版のような体験」を追体験させようとするバランス調整もなくなっており、きちんと「現代にリメイクされた新しい体験」を与えるような調整にしてきたことも好印象を受けた。
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一方でドラクエシリーズの原点とも言える『ドラゴンクエスト1』が、ロト三部作の繋ぎのような扱いの物語に仕上がっていることへの勿体なさも感じられた。追加された要素もおつかいイベントやモンスターの襲撃イベントなど似たようなものが繰り返され、まるで一昔前のJRPGの悪い部分が目立った印象も受けた。
RPGがまだ一般的でない時代だったからこそ、本来の意味でプレイヤーが勇者の役割を演じるゲーム(=RPG)だったドラゴンクエスト。ローラ姫を助けるも助けないも自由だし、敵さえ撃破出来るならどこから進めても自由。それを敢えて一本道の物語に作り替えるよりは、今でいうところのオープンワールドRPGのようなとにかく竜王を倒せばよいみたいな自由度がある物語にしてもらった方が楽しかったんじゃないかなぁというのは一プレイヤーの勝手な願望である。
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順番的には次はHD-2D版ドラクエ2となるところだが、ドラクエ2本分続けてプレイしたこともあってかちょっと飽きが来ているのでドラクエ2は少し間を置いてから遊ぼうかなと思っている。










